トップ>公式記録員とは 第5回
公式記録員が行く〜関西独立リーグの舞台裏
龍間グラウンドの放送室に入った。もちろん、野球場の放送室に入るのは初めてである。
今日の公式記録員は女性だった。年配ならいざ知らず、若い世代では女性の方がスコア
ブックを付けられる人が多い。言うまでもなく、学生時代に野球部の女子マネージャーを
経験した人が、スコアブックを付けられるようになるのだ。一方の選手(男性)は、スコ
アブックは読めても、付けられる人は少ない。僕の周りの野球経験者でも、スコアブック
を付けられる人はいない。
ではなぜ、野球経験もない僕がスコアブックを付けられるようになったのかと言うと、
子供の頃に父親に教わったからだ。ちなみに、父親も野球経験はなかった、そんな父親が
なぜスコアブック記入法を知っていたのか、その理由は知らない。おそらく昔は、スコア
を付けながら野球を見る、というのが娯楽だったのだろう。現在ではスコアを付けながら
野球を見ている人はほとんど見かけないが、たまにいるのは年配の男性か若い女性だ。
本場のアメリカではまだこの風習は残っているようで、大抵の球団パンフレットにはス
コアシートが付いている。映画「フィールド・オブ・ドリームス」では、主演のケビン・
コスナーがフェンウェイ・パークでスコアを付けながら観戦している、というシーンがあ
った。
放送室には僕や公式記録員、そしてやはり関西独立リーグから派遣されてきた場内アナ
ウンサー、つまりウグイス嬢がいた。さらに今日は大阪のホームゲームということで、ビ
リケーンズのチームスタッフが大勢入っていた。そのうちの一人がスコアボードの操作を
する。
試合開始前、公式記録員は、
「どうか、ややこしいプレーが起こりませんように」
と祈っていた。
だが、野球の神様ほどロクでもない神はいない。
スコアブックを付けていて、一番ややこしいのはエラーが絡んだプレーである。NPB
の守備レベルは非常に高く、ややこしいプレーはメッタに起こらないのだが、悲しいかな
関西独立リーグでは「メッタ」がよくある。
このことは担当者からは事前に聞かされており、イヤ〜な予感はしていた。