トップ公式記録員とは 第7回 

公式記録員が行く〜関西独立リーグの舞台裏

この写真は僕が撮影したものだが、写真でもわかるように放送席はバックネットの真下である。こんな席から野球を見るのは初めてだったが、そんな余韻に浸っている暇もなく、すぐに記録の集計にとりかかった。実際にスコアを付けるより、記録の集計の方がずっと煩わしい。

数字を間違うと記録は全て無駄なものになってしまう。
しかも、この煩雑な作業を試合終了後1時間以内に済まさなければならない。球団関係者は1時間後に撤収するし、記録をすぐに共同通信社にファックスしなければならない。
記事を書く方がずっと楽だ。
公式記録員の方と数字を照らし合わせ、なんとか集計を済ませた。公式記録員はすぐに集計記録をファックスしに行った。今日の僕は責任のない立場だったが、次回は僕一人でこなさなければならない。考えただけでも気が重い。

それでも、この仕事ならではの楽しみもあった。
試合前、放送席に一人の男が声をかけてきた。背番号5、あれは大阪の監督の村上隆行さんだ。近鉄バファローズの主軸打者として活躍した人である。
球審が放送席に選手交代を告げに来る。パ・リーグ審判員だった前田亨さん!?
大阪の一番打者、平下がバッターボックスに入る。コーチ兼任の平下って、元阪神の平下晃司!?

僕が藤波辰爾なら「お前、平下だろう!」

と叫んでいるところだ。(※注)
明石のリリーフに前田勝宏という投手がマウンドに立った。

前田勝宏?

どこかで聞いたことがある名前だな。あ、西武からメジャーを目指した、あの剛速球投手か!渡米するとき、外国人記者から「なぜ金髪なのですか?」と質問され、「アメリカが好きだから」と答えた、あの前田!

考えてみれば、吉田えりちゃんよりも、こっちの方がよっぽど野球ファンを唸らせる人材が揃っているのかも知れない。

公式記録員もウグイス嬢も電車で来たというので、最寄り駅まで車で送ることにした。
ウグイス嬢は、行きはバスの時間が合わず、やむなくタクシーを使ったのだという。タクシー代だけで交通費のほとんどが消えたことだろう。
 帰りの車の中では、濃い野球談議が続いていた。二人とも、野球のことを実によく知っている。公式記録員はライターを目指していると言っていたし、ウグイス嬢には野球をやっている高校生のご子息がいるそうだ。
 関西独立リーグは、こういう人たちに支えられているのだろう。


※注:藤波辰爾は現役プロレスラー時代、覆面レスラーのスーパー・ストロング・マシンをリング上で「お前、平田だろう!」と名指しした。覆面レスラーの正体をバラすのはタブーだったので、このシーンは衝撃的だった。ちなみに、スーパー・ストロング・マシンの正体は藤波の言うとおり平田淳嗣だった。


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