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第一章　墨谷第二中学校　谷口キャプテン編－11

〈検証〉墨谷二中、来春の選抜大会出場決定

　墨二が青葉に敗れたため出場を逃した全国中学校野球選手権大会が行われている中、墨二が来春に行われる全国中学野球選抜大会出場校に選ばれた（キ三巻一四七頁）。

　なぜこの時期に選抜大会の選考がなされたのかは不明だが、そういう習慣なのかもしれない。ちなみにこの選手権大会が行われている最中、墨二の生徒たちは冬服を着ている。衣替えは普通一〇月であり、となると選手権大会は秋に行われているのだろうか。しかも登校している生徒たちは夏休みのクラブ活動ではなく普通の授業で登校しているようなので、この年は選手権大会が夏休みに行われていない可能性がある。
　ただ、そういう設定にすると来年度以降の選手権大会が矛盾してくるので、ここはあえて「選手権大会は夏休みに行われる大会」と限定させていただく。

　さて、『キャプテン』の世界では中学野球にも高校野球と同様に「春の選抜」と「夏の選手権」の二つの全国大会があるようである。なお、この二つの正式名称については、「春の選抜」は『キャプテン』の六巻七四頁のアナウンサーの言葉から、「夏の選手権」は『キャプテン』の二〇巻の表紙に描かれてある優勝旗を参考にさせていただいた。
　さて、現実の高校野球（硬式）にはご存知の通り「選抜高等学校野球大会（通称・春のセンバツ）」と「全国高等学校野球選手権大会（通称・夏の甲子園）」大会の二種類がある。他にも「明治神宮大会・高校の部」や「秋季国民体育大会・硬式高校野球」などがあるが、ここでは無視する。

　『キャプテン』の世界でも「春の選抜」「夏の選手権」の二大大会を軸にしているようで、これも高校野球の運営方法を踏襲していると見られる。

　ただ、「夏の選手権」はともかく、「春の選抜」は高校野球のセンバツとは少々違うようだ。
　高校野球のセンバツ出場校の選考方法は、全国一〇地区に分かれて秋季新人戦（一、二年生のチーム）を行い、それが来春のセンバツ選考の重要参考資料になる。つまり、秋季大会で好成績を収めるとセンバツに選ばれるチャンスが出てくるわけだ。ただし、選手権と違いあくまでも「選抜」なので、選ばれるための明確な基準があるわけではない・
　ところが、この『キャプテン』世界には、この秋季新人大会が存在しないようなのだ。今回の墨二の選抜出場決定も、「夏の地区予選で青葉と好試合を演じたから」というのが選考理由になっている。本当なら青葉一校しか選ばれないはずだったそうだ（キ三巻百四十八頁）。
　しかし墨二が青葉に対して善戦したのは谷口ら三年生がいたチームで、三年生が卒業する来春のチームとは全く違うはずだ。それなのにどうして選抜出場校にふさわしいと断定できるのだろう。
　実はこの選抜大会については、他にも高校野球におけるセンバツとの大きな違いがあるのだが、それは『丸井キャプテン編』で後述しよう。

　では、現実の中学野球にはどんな大会があるのか？知らない人も多いと思うので、簡単に解説してみよう。
　現実の中学野球にはやはり大きな大会が二つあって、そのうちの一つが「全国中学校軟式野球大会（略称・全中）」で、形態は『キャプテン』世界の選手権大会に近い。各地区を勝ち抜いた中学野球部の全国大会を各県持ち回りで夏休みに行われる。

　もうひとつは「全日本少年軟式野球大会（略称・全日本）」で、こちらは中学生年齢のクラブ大会の色彩が強い。もっとも、中学の野球部も参加できるが、全中と同じく夏休みに開催され、こちらは横浜スタジアムで行われる。『キャプテン』世界と現実では随分違うようだ。なお、現実の中学野球では高校野球の名門・明徳義塾が中等部でも何度も全中で優勝したことがある強豪であり、「現実中学野球の青葉学院」と言えるかもしれない。
　『キャプテン』世界の中学野球も現実の中学野球も軟式だが、『キャプテン』世界では九イニング、現実世界では七イニングという違いがある。さらに『キャプテン』世界では延長戦は当時の高校野球と同じ一八回打ち切り再試合（現在の高校野球では一五回）だが、現実世界では延長九回打ち切り、以降は特別延長戦（無死満塁から行う、一種のタイブレーク）である。さらに『キャプテン』世界では打者がヘルメットをかぶっていないが、これは当時の軟式野球ではヘルメット着用が義務付けられていなかったからであり、現在では軟式でも中学野球ではヘルメット着用が義務付けられている。

　最後に余談だが、墨谷二中にはクラブが結構多い。
　中学では珍しいラグビー部や空手部もあるし（キ三巻一五三頁）、さらにアメリカンフットボール部員らしき生徒までいる（キ二巻七六頁）。
　墨二にはサッカー部もあり、野球部と共に専用の練習グラウンドがあるが、ラグビー部とアメリカンフットボール部はあの下町の学校の狭いグラウンドで、どうやって練習しているのだろうか？