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コラム@ 墨谷の里を訪ねて

『キャプテン』や『プレイボール』の舞台となっている「墨谷」とは東京23区内という設定になっていることは間違いないが、残念ながら東京都に「墨谷」なる地名はない。そこでこの「墨谷」のモデルとなっている地区を探ってみた。
 まず、本文でも書いているように、「墨谷」が「墨田区」から取ったものだということは容易に想像できる。では、墨田区のどの辺りなのか?

墨谷二中の校歌には「荒川を東に臨み」という歌詞がある。
つまり、荒川の西側に「墨谷」があるのだ。また、同じ歌詞で「春の墨東明け染めて」とある。「墨東」というからには墨田の東ということだろう。
ちばあきお先生は「墨田中学」出身だが、この中学は荒川よりも隅田川の方が近いので、墨谷二中のモデル校とは思えない。

次に、墨谷高の最寄り駅が、最初のうちは「下町駅」(プ3巻121頁)といういいかげんな駅名で、最後の方になると「墨谷駅」(プ22巻168頁)となっている。

しかし、駅の造りや周りの風景は両駅ともそっくりで、名前が変わった可能性もある。もちろん、両駅名とも東京都には存在しない。

 

都心を西にのぞみ……、のナレーションでお馴染みの荒川の鉄橋。

そこで、「墨谷」のモデルは墨田区の荒川沿いと仮定して、「下町駅」「墨谷駅」のような駅を地図で探してみた。まず、この条件に当てはまる路線は国鉄(現在のJR)総武線、京成、東武伊勢崎線だった。
 それぞれの路線を検討してみると、墨谷高が川北商と練習試合をするために市川まで急行で行っている(プ8巻167頁)。たしかに国鉄総武線は市川を通るが、国鉄の急行に乗る場合は急行券が必要なので、国鉄に乗ったとは考えにくい。つまり、国鉄総武線はこれで消える。

  次に東武伊勢崎線だが、こちらはたしかに荒川近くも走るが、どちらかというと隅田川に近い。しかし『キャプテン』や『プレイボール』では隅田川らしき川は出てこないのだ。
 そこで、京成押上線の可能性を考えてみた。山本は子供の頃、よくあおと青砥あたりにザリガニ獲りに行っていたそうだ(プ11巻20頁)。青砥駅といえば、京成本線と押上線の乗換駅である。さらに、駒沢球場からの帰り、「上船駅」という駅で乗り換えようとしている(プ16巻7頁)。
これは明らかに、京成押上線の「押上駅」と「京成曳舟駅」を合わせた駅名だ。なお、東武伊勢崎線にも「押上駅」と「曳舟駅」があるが、当時は押上駅には乗り入れていなかった。

しかし、駅の造りや周りの風景は両駅ともそっくりで、名前が変わった可能性もある。

もちろん、両駅名とも東京都には存在しない。また、谷口が高校一年の時に京成高校と対戦するが、この高校は谷口の家から自転車で行ける距離だった。

この京成高校は京成電鉄が経営していたと考えられる。当然、場所は京成沿線だったのだろう。

こう考えていくと、「京成押上線」の駅で、「墨田区」にあり、「押上駅」と「京成曳舟駅」以外の駅という条件に当てはまるのは「八広駅」しかないという結論に至った。

荒川の鉄橋を渡る京成電鉄。墨高ナインはこの電車に乗って川北商に行った?
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