トップ野球少年の郷第46回
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第四章 墨谷高等学校 谷口二年生編(プレイボール 八〜一八巻)−5

※墨谷高×城東高(練習試合)球場=墨谷高グラウンド

 墨谷 73=10
 城東 0X=0 (城東の試合放棄により墨谷の二回コールド勝ち)
  勝=谷口 負=松下 本=山本(松下)

 前年、七回コールドで破った城東との練習試合。墨高は城東の先発・松下から山本のホームランを皮切りに三連打でKO。さらにリリーフしたエース藤井にも容赦なく襲いかかり、初回に一挙七点。その裏、谷口は城東打線を全く寄せ付けず三者凡退。二回表の墨高の攻撃では一年生を起用。一年生たちも藤井を問題とせず、三点を奪った時点で城東がギブアップ。一〇―〇で墨高の二回コールド勝ちとなった。

 前年は城東の慢心に付け込んでの勝利だったが、今年は実力で城東を圧倒した。

 〈検証〉城東との練習試合

 墨高ナインが河川敷でザリガニ獲りに熱中している時、城東のマネージャー(ちなみに男)が練習試合の申し込みに来た(プ一一巻二三頁)。なぜザリガニ獲りをしていたかというと、一年生の上達ぶりに上級生が慌ててオーバーワークが目立ったため、たまにはノンビリしようと谷口が練習を中断したためだった(プ一一巻一五頁)。それを城東のマネージャーが誤解して、トレーニングそっちのけでザリガニ獲りに熱中しているチーム、と思ってしまった(プ一一巻二五頁)。

 城東としてみれば、前年の七回コールド負けは完全な油断負け、今年は墨高も力をつけているだろうから、大会前に叩くという作戦だったのだろう。しかしマネージャーの報告で藤井―清水のレギュラーバッテリーを温存し、先発は松下で臨んだ。

 場所は墨高グラウンド。城東には河川敷に立派なグラウンドがあるのに(プ二巻一九一頁)、なぜわざわざ狭い墨高のグラウンドを城東が指定した(プ一一巻二四頁)のかはわからない。
 しかし、この狭いグラウンドが幸いしたのか、一回表に山本が松下から初回先頭打者初球ホームランを打った(プ一一巻四八頁)。

 松下はドロップ(縦のカーブ)を覚え(プ一一巻四〇頁)、自信をつけていた。後輩の加藤と島田に対しても、去年のようにはいかん、と話していた(プ一一巻三五頁)。加藤と島田は松下に対して敬語を使っていたが(プ一一巻三四頁)、中学時代は加藤が「うちは後攻なんだぞ、倍にしてかえしてやるぜ」と思い切りタメ口で松下にハッパをかけていた(キ三巻五四頁)。

 山本に続く太田、倉橋が連続安打。倉橋は現在の松下を、カーブのキレは中学時代よりずっと鋭くなっている、と感じているが(プ一一巻六一頁)、松下は中学時代からカーブを投げていたらしい。
 無死二、三塁で谷口がホームラン性の大ファールを打ったところで松下が降板、エースの藤井と正捕手の清水が出てきた(プ一一巻七一頁)。

 しかし墨高打線はエース藤井をメッタ打ちにした。前年に攻略した自信もあっただろうし、アンダースローの藤井に対して、藤井以上のアンダースロー投手だった川北商の小野田と対戦していたのだから、さぞかし打ちやすかったのだろう。

 初回はいきなり七点を奪い(プ一一巻八八頁)、その裏の城東の攻撃は、谷口の見事なコントロールに手も足も出ず、アッサリ三者凡退だった(プ一一巻一〇二頁)。

 二回表の墨高の攻撃からは一年生を起用、硬式初試合の島田あたりは緊張していたが(プ一一巻一一〇頁)、それでも一年生たちは藤井を打ちまくり、一〇―〇になったところで城東がギブアップ(プ一一巻一一七頁)。二回表墨高の攻撃途中で墨高のコールド勝ちとなった。残念ながら松川の初登板はお預けになったが、谷口の分析では城東打線には松川を打つ力は無いそうだ(プ一一巻一一八頁)。

 前年までは墨高をナメきっていた、野球では名の通った城東(プ二巻一九四頁)とは思えない一戦であり、のび太がジャイアンをイジメているようなものだった。

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