トップ野球少年の郷第52回
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第四章 墨谷高等学校 谷口二年生編(プレイボール 八〜一八巻)−11

〈検証〉うな丼からかつ丼へ

 田所は聖陵戦の前の練習で、墨高ナインに一つの約束をした。聖陵を破って五回戦に進出したら夏バテ予防に鰻丼を奢るというものである(プ一三巻六二頁)。山本は「し、しらないスよ、そんなこといって…」と指で円マークを作って驚いているが(プ一三巻六三頁)、『プレイボール』世界では、高級料理の代表がうな丼になっているようである。その山本たちの送別会の時に、田所の「今日はたいへんなプレゼントを用意してきたぜ」という言葉に対して(プ一九巻一七頁)、山本が「うな丼でもごっそうしてくれんのかしら」と言っているぐらいである。ちなみに筆者が八広探索をしたときも、吾嬬二中の近くに鰻屋があった。

 五回戦進出を果たしたため、田所は約束どおり墨高ナインを鰻屋に連れて行った(プ一五巻一四六頁)。しかしナインを残して一人店内に入った田所は、値段表を見て驚いた。梅が一二〇〇円、竹が一六〇〇円、松が一八〇〇円である(プ一五巻一四九頁)。高くてもせいぜい一〇〇〇円ぐらいと予想していた田所は、とても支払える額を持っていなかった。一五人分、梅の一二〇〇円との差額で足りないのは二〇〇円×一五人分で三〇〇〇円。田所は三〇〇〇円分の余裕も持っていなかったのだろうか。もっとも、三〇〇〇円と言っても現在の価値よりはずっと高く、また田所は社会人一年生なので無理な注文かも知れない。

 様子を見るために店内に入ってきた谷口には事情がすぐわかったが、結局外にいるナインには、イスが足りない、と大ウソをついてまた別の店を探そうとした(プ一五巻一五三頁)。まあでも田所も、部費から出しましょう、という谷口の申し出を断るという、男気のあるところを見せているのだが……(プ一五巻一五一頁)。
 この店を探すだけでも散々歩き回った上に、ミーティングの予定もあったので、縁起をかついでかつ丼を食うことになった(プ一五巻一五五頁)。かつ丼ならどんな店でもある。

 墨高ナインが入った店は、かつ丼の並が四〇〇円、上が五〇〇円だった(プ一五巻一五七頁)。田所は有無を言わさずかつ丼の上を一五個注文している。中にはかつ丼以外の物を食べたい部員もいるかも知れないのに、田所は無視している。ちなみに天丼の上は六〇〇円だった。それに部員は一五人のはずで、田所を合わせて一六人になるのに、注文数は一五個だ。欠席者がいたのだろうか。後日、田所がいない時に部員全員で専修館×三山の試合を観に行っているが、このとき半田はアイスクリームをちゃんと一五個買っている(一八〇頁)。ただ気になるのが、東京大会に入ってから村瀬の姿が見られないことだ。でも半田はアイスクリームをちゃんと一五個買っているのだから、まだ退部はしていないのだろう。

 運ばれてきたかつ丼は汁付きで、重箱に入っていた(プ一五巻一六一頁)。上だけかつ重になっているのだろうか。『プレイボール』に出てくる食い物はみんな美味そうで、筆者が子供のころ読んだときは、心底このかつ重を食べたくなったものだ。

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