トップ野球少年の郷第63回
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第五章 墨谷第二中学校 イガラシキャプテン編(キャプテン 九〜二二巻)−6

C墨谷二中×向島中(地区予選準決勝)球場=不明

Cの試合内容については一切不明。墨二が決勝戦進出。

D墨谷二中×江田川中(地区予選決勝)球場=高野台球場

 墨谷二 010 000 001 7=9
 江田川 000 000 002 0=2 (延長一〇回)
  勝=近藤 負=井口

 地区予選決勝は墨二と、青葉を準決勝で破った江田川との対戦。
 墨二は二回表、イガラシ(兄)の故意四球による出塁でチャンスを掴み、二死三塁からイガラシ(弟)のバントヒットで先制点。

 その後は井口とイガラシ(兄)の投手戦となり、一―〇で迎えた九回表の墨二の攻撃。江田川の拙い守備で二死三塁のチャンスを掴み、イガラシ(兄)のサード強襲二塁打で二点目。

 九回裏、江田川はライト近藤の拙い守備から無死二、三塁と一打同点のチャンス。ここで墨二はイガラシ(兄)から近藤にスイッチ。四番の井口はライトへの犠牲フライで一点を返す。一死三塁から代打の藤木がバスターでセンターオーバーの三塁打、同点に追いつき、さらに一死三塁と一打サヨナラの場面を作った。

 江田川は代打攻勢をかけ、一死満塁でとっておきの代打・遠井を打席に送った。遠井は散々粘った挙げ句、放った打球はセンター前に落ちた。しかし三塁ランナーのスタートが遅れ、本塁でアウト。さらに九番の田村はサードライナーに倒れ、江田川はサヨナラの絶好のチャンスを逃した。
 延長の一〇回表、江田川は四人もレギュラーを降ろしたため、守備が乱れまくり、井口は七点を取られて遂に力尽きた。

 墨二は延長一〇回、九―二で江田川を下し、全国大会出場を決めた。

 〈検証〉江田川×青葉の準決勝

 地区予選の準決勝は墨二が向島を破り、江田川が青葉に四―〇と完勝して決勝に駒を進めた。
 二年前まで無名だった墨二(谷口のキャプテン時代も含む)に対して一〇戦全敗(内、八回がコールド負け)だった江田川が、前年まで全国大会連続優勝していた青葉に完勝するという、数年前までは考えられない事態になった。昔の青葉の部長は江田川なんて名前すら知らなかっただろう。

 これはもちろん、井口の加入が大きい。春の選抜決勝では、敗れたとはいえ和合から一点を取った青葉打線相手に、二塁を踏ませず完封という完璧なピッチング(キ一三巻一一頁)。しかも井口は青葉をノーヒットノーランに抑える自信があったようだ(キ一三巻一二頁)。なにしろ青葉の一番打者を打ち取った(おそらく三振)時点で、青葉応援団が静かになったほどだ(キ一三巻三六頁)。

 そして江田川が強くなったのは井口だけのせいではない。「ミサイル打線」の異名をとる(キ一三巻六一頁)強力打線があるからでもある。もっとも、前にも書いたように江田川打線が強力になったのは打撃練習で井口の球を打っていたからだと考えられるが、井口一人ではここまで強いチームにはならなかっただろう。井口の加入がチーム全体のレベルを上げたと考えられる。ただ、井口がピッチャーの時は三振ばっかりで守る必要がないので、守備力だけは向上しなかったが……。

 江田川打線は青葉が誇る五人の投手から四点をもぎ取った(キ一三巻一一頁)。丸井が最も警戒していた投手陣(キ一二巻一四五頁)を粉砕してしまったのである。しかもこの投手陣、丸井の口ぶりによると、春の選抜後に作りあげたようである。選抜の決勝でも和合が青葉から四点を取っているが、この時にはまだ強力投手陣は形成されていなかったようだ。となると、レベルが上がった夏の青葉投手陣から四点を取った江田川打線は、和合打線よりも強力だとも思える。乱暴なようだが、三段論法で江田川は春の覇者・和合よりも強かったのではないか。もっとも、和合も夏にはレベルアップしたようだが。江田川よりも青葉を警戒しろと言った丸井のアドバイスは、完全に外れていた。

 青葉に対して自信を持っていたのは井口だけでなく、江田川ナイン全員だったようでもある。墨二との試合前、井口とイガラシが顔を合わせたが、その時に井口が「(江田川ナインは)こんな大試合、はじめてなもんでコチコチなんだよ」とイガラシに言っている(キ一三巻一〇頁)。つまり、江田川にとって青葉との試合は大試合ではなかったということになる。かつては完全無欠を誇った選抜準優勝の青葉も随分ナメられたものだ。

 個人的にはこの江田川×青葉をぜひ見てみたかったが、残念ながらこの試合は『キャプテン』には収録されていない。

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