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第五章 墨谷第二中学校 イガラシキャプテン編(キャプテン 九〜二二巻)−11 

 F墨谷二中×?中(全国大会二回戦)球場=?
 G墨谷二中×?中(全国大会三回戦)球場=?

 F、G共に墨二が圧勝。それ以外は不明。

 H墨谷二中×北戸中(全国大会準々決勝)球場=高野台球場

 北 戸 000 000 005=5
 墨谷二 400 000 011=6
  勝=近藤 負=戸田 本=近藤(戸田)

 準々決勝に進出した墨二は東北からの初出場・北戸(きたのへ)との対戦。墨二は初回、北戸のエースで重い速球が武器の戸田の立ち上がりをとらえ、いきなり四点を先制。
 一方の墨二の先発・イガラシ(兄)は北戸打線を巧くかわして無失点を続けた。しかし、重い球を打つのが得意な北戸打線は近藤を引き摺り出そうとイガラシ(兄)をファール攻めにする。
 八回裏、墨二は一点を追加したが、九回表、疲労が激しいイガラシ(兄)に代えて、近藤が登板。近藤は二死一塁まで漕ぎつけるも、その後は北戸打線につかまり、遂に同点に追いつかれた。
 ショックの近藤だったが、九回裏、その近藤がレフトへサヨナラホームラン。
 墨二は準決勝に進出した。

 〈検証〉準々決勝・北戸戦

 準々決勝に進出した墨二は東北からの初出場である北戸と対戦した(キ一六巻一三八頁)。この北戸、東北の何県かはわからない。「北戸」とは「きたのへ」と読み、この読み方で連想されるのが、青森県南部から岩手県北部にかけて見られる、一〜九に「戸」が付いた地名で、特に青森県の八戸(はちのへ)が有名だ。また、北戸ナインは東北弁を喋っているが、筆者は東北弁には詳しくないので、どの地域の方言かはわからない。ただ、北戸ナインが喋る東北弁は濁音がやたら多く使われる以外は標準語とさほど変わらないので、八戸周辺の東北北部の方言とは考えにくい。東北北部の方言は、我々にはほとんど理解できないからだ。いずれにしても、北戸がどこの県の代表かは不明だ。

 試合は北戸の先攻で行われた。墨二の先発はイガラシ。実は試合前、丸井から北戸の戦力分析を墨二ナインは聞かされていた。丸井はこの日のために、北戸の二、三回戦を偵察していた(キ一六巻一三九頁)。まったく丸井は、母校愛が強いというか、よっぽどヒマというか……。それに、北戸は初出場なのに、二回戦から強敵と丸井は予想していたのだろうか。まさか、他校の試合を全て偵察していたりして……。

 丸井は北戸を、凄い粘りのあるチームだと分析していた(キ一六巻一四〇頁)。接戦になればなるほど力を発揮するチームだ、と。北戸のエース・戸田は立ち上がりが悪いので、早い回に三点取っておけば安全圏だろうと説明した(キ一六巻一四一頁)。ただし、早い回に点が取れないと、戸田のコントロールが冴えてくるので、ちょっとやそっとじゃ得点できなくなる、とも(キ一六巻一四二頁)。いずれにしても、早い回に差をつけておくことが大切だった。

 一回表、イガラシは北戸を三者凡退で退けた(キ一六巻一七六頁)。しかしそれはいい当たりの連続だった。どうやら丸井は、不安がらせまいとして、北戸のことを甘めに説明したのだろう。実は丸井が語ったよりも北戸は倍以上の力があると、イガラシがナインに言った(キ一六巻一六八頁)。つまり、三点ではなく六点以上必要だ、と(キ一六巻一七八頁)。

 一回裏、北戸の外野陣は極端に浅いシフトを取った(キ一六巻一八〇頁)。戸田の球は重いのでそう遠くは飛ばないと読んでいたのだろう。しかし一番打者の曽根は、前進守備のセンターの頭を越える二塁打(キ一六巻一八六頁)。

 二番の牧野のとき、さすがに懲りたのか、外野手をバックさせた。しかしそれでも定位置よりは前だった(キ一七巻一一頁)。しかし牧野はライトオーバーの二塁打で、墨二は早くも一点を先制した(キ一七巻一六頁)。
 北戸はとうとう外野を定位置で守らせたが、今度は牧野が三塁へ盗塁(キ一七巻二一頁)、さらに三番の久保がバスターでレフト前ヒット、二点目を入れた(キ一七巻二七頁)。
 墨二はなおも攻撃の手を緩めず、四番のイガラシがライト前ヒット(キ一七巻三二頁)。一塁ランナーの久保が一気に三塁を落とし入れ(キ一七巻三三頁)、その送球の間にイガラシが二塁へ進んだ(キ一七巻三四頁)。墨二のやりたい放題だ。

 無死、二、三塁でバッターは五番の近藤。イガラシは意表をついてスクイズのサインを出すが、近藤は例によってサインを見ていなかった(キ一七巻三九頁)。近藤が放った打球はレフトへの大きな当たり。ウォーニングゾーン手前でレフトが捕ったが(キ一七巻四〇頁)、普通なら犠牲フライには充分な距離だった。しかし、スクイズのサインが出ていたためサードランナーはスタートを切っており、当然ホームには戻れなかった(キ一七巻四一頁)。またもや近藤の大チョンボである。
 しかし六番の小室が一塁線を破る三塁打で二者を迎え入れ、墨二は初回に早くも四点を奪った(キ一七巻五〇頁)。

 一死三塁でバッターは七番の佐藤。これまでは八番を打っていた佐藤だが、調子がいいのか七番に上がってきた。その佐藤は初球スクイズ!しかし打ち上げてしまい、キャッチャーの山口が好捕(キ一七巻五五頁)、三塁に転送されてダブルプレーとなった(キ一七巻五六頁)。
 二回表の北戸の攻撃。この攻撃中、戸田はブルペンで調整していた(キ一七巻六〇頁)。一回同様、いい当たりが多かった北戸打線だったが、この回も三者凡退で切り抜けた。このとき珍しく、近藤がこの試合二つ目のライトフライを処理している(キ一七巻七九頁)。近藤も多少は守備が上手くなったようだ。
 二回裏、打順はこの日、八番に入った慎二から。慎二はブルペンでの調整で立ち直りつつある戸田からセンター前ヒット(キ一七巻八七頁)。
 九番・松尾の送りバントはサード増本のフィルダース・チョイスを誘い、無死一、二塁のチャンス(キ一七巻九一頁)。
 ここで一番の曽根が送って一死二、三塁(キ一七巻九五頁)。ここでもストライクバントではなくバントエンドランであり、曽根はウエストされたボールを無理にバントしている(キ一七巻九四頁)。
 二番の牧野に対してイガラシが、カウントが良くなるのを待ってスクイズ、と作戦を授けるが(キ一七巻九六頁)、状況が変わって0―1でスクイズのサインを出した(キ一七巻九九頁)。しかし今度はそのサインを牧野が見逃して、フェイントだったバントの構えにボールが勝手にバットに当たり、ピッチャーフライのダブルプレー(キ一七巻一〇一頁)。一瞬にしてチャンスが潰れてこの回は無得点となった。牧野は近藤がスクイズのサインを見逃した時、近藤に対して怒りをぶつけたが(キ一七巻四三頁)、人のことを言えた義理ではない。

 それにしても墨二は、三度スクイズのサインを出して三度とも失敗。このスクイズ失敗が苦戦に結びついたのか。
 その後、戸田は完全に立ち直り、墨二に得点を許さず、イガラシも北戸打線を翻弄して、四―〇で墨二リードのまま七回表の北戸の攻撃を迎えた。
 北戸打線は戸田の球を練習で打っているため、重い球を得意としているので近藤が登板するのを待っていたが、そのことを見抜いていたイガラシは自分が完投するつもりでいた(キ一七巻八一頁)。
 そこで、北戸はイガラシをファールで潰す策に出た。二番の増本、三番の吉田は徹底的に粘った挙げ句、三振に倒れたが、それでも二人合わせて五〇球近く投げさせた(キ一七巻一三五頁)。それが本当なら、少なくともどちらかは二五球ぐらい粘ったことになる。なんと、江田川の遠井の記録を抜いてしまったのだ。もちろん、だからどうだと言われても困る。
 四番の山口も粘りに粘った末にセンターフライでチェンジになったが(キ一七巻一四六頁)、マウンドから降りる途中でイガラシはよろけてしまい(キ一七巻一四七頁)、ファール攻めの効果を北戸に教えてしまった(キ一七巻一四八頁)。

 七回裏の墨二の攻撃。一死無走者で慎二がレフトフライに倒れ2アウト(キ一七巻一四九頁)。八番の佐藤が打席に入った。
 ん?この試合では佐藤が七番、慎二が八番だったはずだぞ。慎二は今までのクセで佐藤より先に打席に入ってしまったのか。墨二も、北戸も打順間違いに気付いていないのか。
 ところが北戸のキャッチャーの山口は、佐藤のことをちゃんと七番打者と認識している(キ一七巻一五二頁)。
 さらに八回裏の墨二の攻撃は、二死一、二塁で三番の久保という場面の描写があるが(キ一八巻九頁)、三番打者が二死一、二塁で打席に立つには、無得点の場合は八番打者から始まらなければならない。七回裏は佐藤がライトフライに倒れて終わっているので(キ一七巻一五九頁)、やはり八回裏の墨二の攻撃は八番から始まっているのだ。そして二死一、二塁で久保の打席の時、セカンドランナーはなんと慎二である(キ一八巻九頁)。つまり、慎二は打ち直しをしているのだ。それだけでなく、七回は佐藤の打順のところで間違えたのではなく、六番の小室のところで打つという、凄まじい打順間違いをしていることになる。しっかり者の慎二には信じられないことだ。
 ところで打順間違いの場合、打席の途中で守備側がアピールすると、攻撃側のペナルティは無く、そのままのボールカウントで正規の打者が引き継ぐことになっている。しかし、打順間違いの打者が打撃を完了すると、その打撃結果いかんに関わらず、正位打者はアウトになり、間違えた打者は正規の打順で打ち直しとなる(野球規則六・〇七)。

 つまり、守備側が攻撃側の打順間違いに気付いても、その時には審判にアピールしないで、打たせた後にアピールした方が得というわけだ。なお、六番の小室の代わりに八番の慎二が間違えて打ってしまったこのケースでは、慎二はどっちみちレフトフライに倒れており、北戸がアピールをしようがしまいが関係なかったのである。
 八回表、北戸の攻撃。五番の下山田は例によってファール攻めをした。この「下山田」という名字、「北戸」周辺では多いのだろうか。下山田は粘った挙げ句レフトフライに倒れた(キ一七巻一七六頁)。しかし六番の柳井には粘られた末に死球を与えてしまった(キ一七巻一八三頁)。
 このとき、北戸のリーダー格の山口は「そ、そーらみろ!きっとこんなごっだろうと思っでだよ」と東北訛りで得意気に言っていたが(キ一七巻一八四頁)、柳井には随分自信なさげなアドバイスを送っていたではないか(キ一七巻一七七頁)。

 イガラシの疲労に、少しの間だけでも近藤に代わってもらった方がいいのではないか、と墨二ナインは提言するが、イガラシは頑なに拒否した(キ一七巻一八五頁)。
 一死一塁でバッターは足がある七番の小森。ここで山口はバントのサインを出した(キ一七巻一九三頁)。牽制球の際、イガラシの足がもつれたので(キ一七巻一九二頁)、足でかき回そうというわけだ。
 しかしイガラシはこの作戦をアッサリ見破り(キ一七巻一九六頁)、投げた瞬間に思い切りダッシュしてこのバントを1―4―3の併殺でしとめた(キ一七巻一九九頁)。しかし、バットの握りと牽制球の構えだけで簡単に作戦を見抜かれた北戸は(キ一七巻一九五頁)、相当小細工がヘタである。ここら辺りが初出場校の粗さか。
 八回裏、二死満塁でバッターは四番のイガラシ。このとき、イガラシは丸井がスタンドにいることに気付いた。丸井は高野台球場に墨二ナインと一緒に来たのだから(キ一六巻一三一頁)、当然、丸井がスタンドにいたことは知っていたはずだ。しかし、丸井がどこにいたのかがわかったのが八回裏で、しかもベンチのすぐ横に丸井はいたのだから(キ一八巻一四頁)、イガラシは疲労のため思考回路が相当衰えていたのだろう。あんなに目立つ所にいたのなら、すぐにわかるはずだ。
 イガラシはレフト前ヒットで一点追加、と思ったら、疲労のため一塁はギリギリセーフだった(キ一八巻二一頁)。危うくレフトゴロとなるところで、イガラシの疲労は尋常ではない。まあそれでも、墨二の追加点は成立した。

 そしてレフトからファーストへの送球の隙に曽根が一気にホームへ。しかしこれは間一髪アウトとなり、墨二の八回裏の攻撃は一点で終わった(キ一八巻二二頁)。
 九回表、最後のマウンドに登ろうとするイガラシに、丸井は近藤にリリーフしてもらうように勧める(キ一八巻二五頁)。しかし言うことを聞かないイガラシはドサクサに紛れてマウンドに登ろうとするが、激しい疲労のため倒れてしまった(キ一八巻二七巻)。これにはさすがに他のナインも交代を勧め、遂に近藤にリリーフを託した(キ一八巻二九頁)。レフトゴロを食らいそうになったぐらいに疲労しているイガラシだ。ここでマウンドを降りるのは当然だろう。
 九回表、北戸最後の攻撃。八番の左打者からだ。サードのイガラシが疲労しているため、インコース(右打者ならアウトコース)を徹底的に突け、と小室は近藤に言った(キ一八巻三三頁)。八番打者はインローの速球を巧くとらえるも、ライト松尾の好捕により1アウト(キ一八巻三八頁)。アウトになったとはいえ、北戸打線が近藤の球と相性がいいというのは本当のようだ。なお、八番打者の分析によると、近藤の球は戸田よりも少し速いそうだ(キ一八巻四〇頁)。
 その九番の戸田は、近藤に巧く打ち気を外されたにもかかわらず(キ一八巻四五頁)、近藤の外角球を難なくとらえてライト前ヒット(キ一八巻四七頁)。なるほど、北戸打線は重い球に強い……って、他のナインが重い球に強いのはわかるが、なんで自分の球を打ったことがない戸田まで重い球に強いねん!
 まあ、そんなことはどうでもいいのだが、トップに還ってバッターは佐山。ここで北戸が取った作戦は五点差があるのに、なんとバント!当然、セーフティバントなのだろうが、この作戦を近藤が読み、ダッシュして二塁封殺してしまった。しかもフォースプレーなのに、セカンドの慎二はタッチにいっている(キ一八巻五二頁)。
 二死一塁で五点ビハインド。後が無くなった北戸のバッターは二番の増本。近藤が徹底的に外角を突くので、増本は内角にヤマを張ったが、それを見抜いた近藤は小室のサインを無視して内角を攻め、たちまち2―1と追い込んだ(キ一八巻六一頁)。
 この近藤に対し、イガラシが怒った。近藤は「そ、そやかて、バッターのやつ、外角球にヤマをはってるもんで」と言い訳をしたが、イガラシは「だったら外角を打たせりゃいいじゃねえか!」と近藤の意見を退けている(キ一八巻六二頁)。このときの墨二は右翼寄りにシフトを取っており、守備が手薄な左翼に打たれたらひとたまりもない、というわけだ。

 だが、このケースは九回、五点リードで二死一塁、確実にアウトを一つ取れば勝ちの場面である。外角一辺倒で攻めなくてもいいのではないか。仮にそれで出塁を許しても、外角に的を絞られるよりはアウトを取れる公算は高い。この後、外角一辺倒のため大ピンチを迎えるが、これは完全にイガラシの采配ミスである。
 増本には外角球をライト前に打たれ、二死一、三塁となった(キ一八巻六六頁)。
 三番の吉田には右中間にヒットを打たれ、この試合初失点(キ一八巻七九頁)。一―五で二死一、三塁となった。
 バッターは四番の山口。墨二ナインはイガラシにリリーフを勧めるが、今度は逆にイガラシが再びマウンドに登るのを拒絶した。理由は、イガラシの軽い球でホームランを打たれたら、四点差が一点差になってしまうからだった(キ一八巻八二頁)。

 これまでも何度も指摘しているが、九回でのこの場面で、四点差が一点差になっても全然構わないのである。二死無走者でその後を抑えれば勝つことができるのだから。これが八回以前なら話は別だが、このケースでいちばん大事なことは、早くアウトを取ってゲームを終わらせることである。四点リードしているのだから、ここで3ランを打たれてもなんの問題もない。ただ、いくら北戸打線が近藤を得意としていると言っても、イガラシの疲労度から考えると近藤の続投が妥当だろう。

 とにかく、イガラシの主張が通って、近藤が続投した。
 四番の山口は、勝負を誘うためボール球をわざと空振りした(キ一八巻八五頁)。山口のあまりの自信に恐怖した近藤は、なんと自ら敬遠を申し出た(キ一八巻八六頁)。江田川戦では、敬遠を頑なに拒否したあの近藤がである。それだけ近藤が大人になったということだろうか。
 だが、この場面での作戦としては最悪だ。何度でも言うが、今の場面は九回表で墨二が四点リード、二死一、三塁だ。ホームランを打たれてもまだ一点リードしているのである。つまり、このケースではホームランでも四球でも全く一緒である。そして、この場面で山口に打たせても、アウトになる可能性はゼロではない。逆に、故意四球ならアウトになる可能性はゼロだ。なぜこんな無意味な作戦を取るのか。ここで近藤がやるべきことはただ一つ、山口と勝負することだ。結果、ホームランを打たれても構わない。無条件に歩かせるよりもずっとマシだ。

 しかし、近藤は山口を歩かせてしまった。ここで満塁ホームランを打たれれば、同点に追いつかれる場面を作ってしまったわけだ。
 ここで墨二応援団が、近藤にリリーフするように勧めた丸井を非難するようなことを言っている(キ一八巻八八頁)。しかし丸井は、あのままイガラシが続投すれば、ヘタしたら二度と野球ができなくなるかも知れなかったから、と説明した(キ一八巻九一頁)。この丸井の意見は正しい。勝つために選手を潰してしまうような指導者にはぜひ聞いてもらいたい言葉だ。

 二死満塁から五番の下山田が放った打球はライトオーバー、走者一掃の三塁打となった(キ一八巻九五頁)。これで五―四と一点差に迫った。
 二死三塁で六番の柳井。外角球を狙われていると感じた近藤はまたしてもサインを無視して内角へ。しかしこれを打たれてしまい、サード強襲ヒットで遂に追いつかれた(キ一八巻一〇九頁)。ただし、二塁を欲張った柳井はアウトでチェンジとなった(キ一八巻一一一頁)。勝負球は外角でも良かったが、せめて内角の見せ球ぐらいは使うべきだっただろう。

 九回裏、五―五と追いつかれて、墨二の攻撃は五番の近藤から。打たれ続けた近藤は明らかに意気消沈していた。
 しかしイガラシがベンチから近藤をリラックスさせるために声援を続け、球威が落ちた戸田の球を近藤がとらえ、放った打球はレフトスタンドに吸い込まれた(キ一八巻一二八頁)。
 近藤は自分が打たれた分の尻拭いをし、墨二は準決勝に進出した。

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