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第七章 墨谷第二中学校 近藤キャプテン編(キャプテン 二二〜二六巻)
これで『キャプテン』は終了するが、夏の大会を残しているところは『プレイボール』と同じだ。
でも、『キャプテン』の場合、この年の夏の大会よりも、むしろ来年の方が気になってしまうのは筆者だけだろうか。
まず、次期キャプテンが誰になるのかが興味深い。
それまでの歴代キャプテンは、谷口の次は丸井だろう、丸井の次はイガラシだろう、その次は近藤以外にはいないと予測がついた。
しかし、近藤の次となると……、いちばん有力なのは慎二だが、慎二の場合はイガラシの弟というだけで、今ひとつインパクトに欠ける。慎二が活躍したシーンはさほどないし、性格的にもゴマスリ上手という以外には特徴が無い。
慎二の対抗馬はなんといっても松尾。なにしろ松尾は、墨二を選抜棄権に追いやった張本人だ。母親のキャラクターもインパクトがあり、塾をサボって影の努力でレギュラーを掴み取ったエピソードも捨てがたい。
次期キャプテン争いは、これまでにはないデッドヒートになりそうだ。ただ、二人ともスケールがやや小さいのが心配だ。
そのスケールの小ささを補うのが、一学年下のJOY(佐々木)。
JOYのピンチにも動じない試合度胸はこれまでの歴代キャプテンにはない魅力だ。JOYの球は軽いがノビがあるし、打ってはスイッチヒッター。もっとスケールの大きい選手になって、墨二を引っ張っていくに違いない。
近藤による、新入生の長所を大きく伸ばす指導が、JOYのような大器を発掘したのだ。
最後に、墨谷二中の歴代キャプテンを総括しよう。
墨二野球部の歴史は谷口がキャプテンに就任した時から始まったといってよい。大凡キャプテンには向かない性格と思われていた谷口が、無言の努力でナインを知らず知らずのうちに引っ張り、無名の墨二を中学野球有数の実力校に押し上げた。
後を継いだ丸井は、その類稀なる愛校心で谷口野球を継承し、より強力なチームを作り上げた。
その後のイガラシは、厳しい指導と的確な采配で、墨二を最強チームに育て上げた。
そして近藤。近藤は若い芽を摘むことなく、一人一人の個性を尊重し、より良い方向に墨二を導こうとした。
谷口、丸井、イガラシ、近藤。
それぞれのやり方は違っても、「野球が好きだ」という思いに変わりはない。
それはこの四人に限ったことではなく、大勢のチームメイト、墨谷高で遭遇した田所や倉橋にも言えることだ。もちろん、名勝負を繰り広げた対戦チームの選手たちも。
こんな選手たちをを生み出した「墨谷」は、やはり「野球少年の郷(ふるさと)」である。
―完―