トップ>オフサイドライン第7回
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40分ハーフの前半15分過ぎ。ジャパンは相変わらず中華台北に0−7とリードを許している。
自陣10mライン付近からジャパンボールのスクラムとなった。
野島がスクラムにボールを入れた。ここではジャパンのフォワードは、無理には押さない。
素早くスクラムの後方に回った野島は、スクラム最後列のナンバーエイト・森岡の左太ももを二度叩いた。「ハチキュー」のサインだ。
「ハチキュー」とは背番号8と9、つまりナンバーエイトとスクラムハーフによるサインプレーのことで、スクラム内にあるボールをそのままナンバーエイトが持ち出し、サイドアタックをすると見せかけてスクラムハーフにパスするというプレーだ。
ボールを受け取った野島はオープンに廻すと見せかけ、そこからさらに自分でサイドアタックをかけた。野島が最も得意とするプレーだ。
中華台北のディフェンスラインは完全に穴が開き、野島は一気に独走態勢に入った。自陣からハーフウェイを越え、敵陣の22mライン前まで突進した。
ここで敵のウィングに捕まったが、フォローに来ていた遠藤に素早くパス。遠藤はディフェンスを難なく振り切り、ゴール中央へトライを決めた。もちろん、コンバージョンゴールもアッサリ決めて、7−7の同点に追いついた。
野島自身のテストマッチ初トライにはならなかったが、野島は充分に満足していた。十八番のプレーで、自陣から一気にトライを奪い、同点に追いついたのである。
なによりもこのトライによって、それまで浮き足立っていたジャパンが落ち着きを取り戻した。前半の早い段階で同点に追いつけたので、今後は有利に試合運びをすることができる。
野島のプレーは、野島自身のディフェンスミスを帳消しにした。
このあとのキックオフでゴール前まで攻め込まれ、フォワードが思わぬ反則を犯した。
この反則によるペナルティゴールで3点を奪われ、7−10と再びリードを許した。だが、もうジャパンフィフティーンが慌てることはなかった。
前半の30分過ぎ、ジャパンのフォワードがモールを押し込み、そのままトライで逆転。さらに前半終了間際にもバックスのオープン攻撃によってトライを奪った。
結局、思わぬ苦戦を強いられたものの、19−10とジャパンのリードで前半を折り返した。