トップオフサイドライン第10回 



 後半は中華台北のキックオフで始まった。
 中華台北のスタンドオフは深く蹴りこんだが、このボールをキャッチしたフルバックの山本はタッチには蹴ら
ずに、カウンター攻撃を仕掛けた。

 突破力のある山本は敵のディフェンスラインを引き裂き、一気に敵陣まで駆け抜けた。10mライン付近で捕
まったが、すぐにフォワードがフォローし、ラックから野島が素早くオープンに廻した。

 中華台北のディフェンスラインはできていない。ジャパンが誇るオープン攻撃で遠藤から両センターを経てウ
ィングの芝川にボールが渡り、ノーホイッスルトライ。ゴールも決まり、26−10とその差を拡げた。
 点数が競っている場合、後半の開始直後は非常に大事である。たとえリードされていてもこの時間帯で得点で
きれば一気に波に乗れるし、逆にリードしている側が失点を防げば、終盤は有利に試合を進めることができる。

 それが、リードしているジャパンが早々とトライを奪ってしまったのだ。ただでさえ、実力的にはジャパンが
圧倒的に中華台北を凌いでいる。もはやジャパンに負ける要素はない。

 後半早々にトライを決めて16点差に拡がると、ジャパンの選手たちの緊張感は完全に取れた。逆に中華台北
の選手たちは緊張の糸がプッツリと切れて、タックルも甘くなった。
 ジャパンの選手たちは縦横無尽にフィールドを駆け回り、次々とトライを重ねていった。

 後半も20分過ぎ、52−10とジャパンの一方的なリード。もうジャパンの勝利は間違いなく、と同時にジ
ャパンのワールドカップ出場も決定的になっていた。
 そうなると、野島にはもう一つの欲が芽生えた。

 即ち、テストマッチでトライを奪ってみたい、と。

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